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聴けば必ず病みつきになる? インド音楽の魅力に迫りました(タブラ奏者・指原一登さんインタビュー)

最近、糸井重里さんの『ほぼ日刊イトイ新聞』でも特集が組まれるなど、にわかにブームになりつつある(?)インド音楽ですが、以前、『大塚新聞』でも紹介した「マスミ東京 スペースMURO」で、さる4月2日(土)にインド声楽の実力派、モーシン・アリ・カーンさんの来日公演がおこなわれました。

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大好評を博した昨年の初来日を経ての、再来日ツアー!

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当日の共演は、UAとのコラボなどでも知られる日本人シタール奏者・ヨシダダイキチさんと、「大塚新聞」では何度かご登場いただいているタブラ奏者・指原一登さん。この日はなんと、「インド音楽に触れるワークショップ」も同時開催され、インド音楽の魅力に浸りきれる1日となりました。

そこで今回、指原一登さんにインタビューを敢行!

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*タブラ奏者の指原一登さん

「インド音楽」というと、日本ではまだまだ“怪しいマイナーな音楽”…とされていますが、実はとっても高度で洗練された、世界的にも有名な音楽。この機会に、ぜひとも多くの人に興味を持っていただけたらと思っています。

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ーー指原さん、本日はお疲れさまでした! 今回、マスミ東京さんではコンサートだけでなく「ワークショップ」も開催されました。こちらの内容はどんなものだったのですか?

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*インド声楽家のモーシン・アリ・カーンさん

「今回、声楽家モーシンさんのコンサートでしたので、インド声楽に触れてもらう内容にしました。具体的には、参加者の方にインド声楽の発声の仕方、音階、音名、スケール練習と、段階を追って馴染んでいってもらい、最終的にそれらを用いて『バンディッシュ』と呼ばれるメロディラインを歌ってもらうところまで体験してもらいました」

ーー実際に“歌う”体験までできたのですね! それは行きたかったなあ…。でも、難しくはなかったのでしょうか。

「インド音楽というのは、1曲が非常に長いのですけれども、実際にはいくつかの楽章に分かれているんですね。で、それぞれの楽章が『バンディッシュ』をベースに即興を加えながら展開するっていう様式になっているんですよ。それを知っていただけると、インド音楽をもっともっと楽しんでもらえるんじゃないかと思ったんです」

ーーなるほど! お客さんの反応はいかがでした?

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*シタール奏者のヨシダダイキチさん

「おおむね満足していただけたようです。ただ、ヒンディー語の発音や歌の歌詞など、捉えにくい部分もあったようなので、次の機会がもしあれば、そのあたりを改善したいですね」

ーー昨年に続いての来日となった、モーシン・アリ・カーンさんの魅力とは?

「まずはそのキャラクターでしょうか。若くてハンサムで、性格も穏やか。なんだか王子様っぽいんですよね(笑)。そういう、キャラクターとしての魅力ももちろんあるのですが、何より、小さい頃から身体的に叩き込まれた演奏力、歌唱力が最大の魅力です。非常に声量があって、説得力を持った歌声なんです。

ーー聴かせてもらったのですが、駆け上がるような歌い方(「アランカール」)や、高速のビブラート、ロングブレスがとにかく圧巻でした。

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「それらの表現方法は、シタールなどの楽器でも用いるものなのですが、声楽だともっとダイレクトに飛び込んできますよね。これはモーシンが言っていたことですが、曲のムードは、歌(歌詞)が決めるそうです。シンプルな歌詞の背景には神話や物語があり、登場人物がいて、そこに生じる感情がある。メロディラインは、それを表現するものであって、そこに装飾を加えていくことで、さらに情景描写や感情表現を発展させてストーリーを広げていく。それが本来の順序であるということを、僕自身、今回の来日ツアーで改めて確認でき、学ぶことができました。

ーーテクニックや知識が先にあるわけではなく、あくまでも表現すべきテーマや対象があるということですね。

「はい。ですので、言葉や文化を理解できると、もっと本質的に楽しめるのではないかと思います」

ーー今回の公演で演奏された曲(ラーガ)は、「ヤマン」「ソーニ」でした。それぞれの特徴や意味を教えてください。

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「まず『ヤマン』ですが、これは夕方の時間帯に演奏される曲です。リラックスしつつも、空の色がダイナミックに変化していく様子を表現したような、とても強くて壮大なラーガですね。3つの楽章を、1時間かけて演奏しました。『ソーニ』も夕方の時間帯に演奏される曲ですが、こちらはもっとロマンティック。モーシンは、このラーガで使われる音階を絵画にたとえ、『まるで女性を描いていくような感じで歌っているよ』と言っていました。

ーーモーシンさんが、演奏中に弾いていた楽器はなんですか?

『スワル・マンダル』と呼ばれる楽器です。ハープの一種で、これの使い方はヴォーカリストにより様々です。ラーガを歌う上でのガイドとして弾いたり、合いの手のように弾いたり、テンポを変える意思を、この楽器を用いて他のプレーヤーに伝えたり、という使い方をモーシンはしていました。

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*スワル・マンダル

ーーところで、「マスミ東京」さんでの演奏は、他の会場と雰囲気が違います?

「とにかく、そこに座っているだけでも落ち着く空間ですよね。『和紙は呼吸する』とよく言われますが、その和紙を貼った壁面に囲まれていると、こちらが“整えられる”ような感覚になります。日常生活とは異なる時間感覚の中へ誘ってくれるインド音楽を鑑賞する場所として、とても合っているのではないかと思いました。

ーー指原さんにとって、インド音楽の魅力とは?

「個人的に感じているのは、その熱量です。音楽的に増幅されたエネルギーが、溢れて弾ける、閃光が走る、そして射抜かれるような…。そんな体験をしてしまうと、もう忘れられなくなります。巨匠レベルになると、こちらの受ける症状もかなり重くなりますよ(笑)。また古典と言っても、時代とともに発展していく柔軟さや強さを持っていることも、インド音楽の魅力の一つです。

ーーそれは今後もずっと続いていくのでしょうね。

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「そうですね。今やインド音楽が、世界中にも広まっていることを考えると、日本でも発展していく可能性だって十分にあるはずです」

ーー指原さんは、ワークショップやコンサートを頻繁におこなうなど、インド古典音楽の普及を目指して積極的に活動をされていますが、今思い描いているヴィジョン、今後の展望などありましたらお聞かせください。

「インドの『これから』を担う若手ミュージシャンたちと共に、日本の『これから』の普及活動を進めていきたいです。そうすれば、彼らが来日しやすくなりますし、我々ももっともっと紹介しやすくなります。アメリカやヨーロッパでは、かなりそういう土壌ができているんですよ。そのぶん文化交流も活発になり、いい奏者も育っています。日本もそうなっていくことを願っています」

ーー指原さん、ありがとうございました!

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◆ 指原一登(さしはらかずと)
HEAT bEAT MUSIC 主宰。タブラを、巨匠 Pt.Anindo Chatterjee、Sri.Anubrata Chatterjee、及びU-zhaan氏に師事。常に革新と再生を繰り返しながら、生まれ変わり広がってきたインド古典音楽。「今ここで生まれる音楽」として即興で作り上げられて行くこの音楽の無限の可能性に惚れ込み、自身のメインフィールドとして活動している。
国内外で活躍する演奏家・舞踊家・アーティストと多数共演。海外公演など、国内に留まらない精力的な演奏活動を展開中。
主宰する「HEAT bEAT MUSIC」では、各種自主企画・共同企画、および海外からのアーティスト招聘なども積極的に行うほか、タブラ教室・ワークショップの運営にも力を入れている。
よみうりカルチャー講師。

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